クリスはテンプレートそのものを開いて、各トラックに何が入っているか、なぜそれが置かれているかを説明する。まずプリセットから始めるが、彼はそれらを完成した音ではなく出発点と呼ぶように慎重だ。ほとんどのトラックにStuder A800テープを使い、トラックごとにテープ速度を変えてキックは15 ipsで太くねっとりさせ、7.5 ipsでは正真正銘のローファイにする。Slate Virtual Channelはソースに合わせ、ドラムにはBritish console、ギターにはUSA、ボーカルとキーにはSSLを割り当てる。FabFilter Pro-Qは中域にチルトを入れて使う。というのも、大抵の場合は低域を増やして高域を抑えるか、あるいはその逆にしたいからだ。ベースにはバイパスされたOzone Exciterが置かれ、ミックスが濃くなった瞬間にうなりを加えるために待機している。
そこからボーカルチェーンの話に移ると、事は興味深くなる。シリアルに並んだ3台のコンプレッサーのうちの1台は"All Buttons In"の1176 emulationで、どれも約40%でブレンドされている。ゲインリダクションメーターの振れは尋常ではないが、ボーカルは潰れるのではなく前に出てザラついた質感になる。
後半はアーキテクチャ(構成)の話だ。キックとスネアはそれぞれ専用のサブと、キットの他の要素とは切り離したdbx 160を使った並列クラッシュバスを持ち、トムやオーバーヘッドを壊さずにアタックを追い込めるようになっている。すべてはKushコンプレッサーをかけたオールドラムバスにまとめられ、Blue Cat Patchworkでその場でエフェクトを差し替えられるようになっている。次にフルのエフェクトリターンラックがあり、Ocean Way rooms、EMT 140 plate、AKG spring、PCM60 emulation、chamber、MicroShift、H910のペア、SDD-3000のギターディレイをモジュレーションディレイに拡げたもの、そしてReplika XTをディフュージョンモードで使ってミックスの背後に薄いヴェールを掛けたり、フェードの余地が残っていない曲を救ったりする。
仕上げはマスターバスだ。サイドチェーンフィルター付きのVSC2、広がり用途にほぼ専用で使われるAbbey Road Mastering、Ozone、そしてリファレンスミックストラックやiTunes(Dante経由)から入力されるMCompare。これによりプラグインを開かずに誰の作品とでもA/B比較ができる。